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12/31:大晦日:なのは洋菓子店の個人的感想

「なのは洋菓子店のいい仕事」、最終巻が発売されて2週間ぐらい経ちました。毎回お話が終わると総括をしているので、今回もしようかと思います。長文です。

 

思えば、前の「神のみぞ知るセカイ」というマンガは、主人公は変人ではありましたが、僕が考える「王道少年マンガ」のフォーマットをきっちり踏襲したマンガでした。 つまり↓

 

1・魅力がコンパクトであること

2・1をひたすら繰り返していること

3・主人公の目的と物語の目的が一致していること。

 

 

魅力あふれる、しかも瞬発力のある魅力を持つ主人公が、その個性でもってエピソードを解決し、その繰り返しが主人公の野望や目標にもつながっている。まあこれが基本の基本なんですよ。何なら3をのけると、全てのマンガの基本になります。

 

翻って「なの菓子」を見てみると、上の三条件を全く満たしていません。決め台詞とか誰も言わないし、一般グルメマンガのような食べて→うまい!というルーティンもない。毎回やることは違うし、そもそも語り部はセージでありますが、明確な主人公も存在しません。お店の話だということだけが何となくわかる。

 

何となれば、僕は神のみと同じことをしたくなかったんです。神のみに長いこと関わったおかげで、僕は「マンガとは?」「主人公とは?」みたいなコンセプト的なインフレが極まりきっていて、神のみスタイルのマンガを繰り返しても、もはや縮小再生産にしかならないと思っていたんですね、当時は。

 

例えば、こういう形にするつもりは全くありませんでした。

 

 

そこで、コンセプト的な部分は「ねじの人々」で継続し、サンデーの方では、”全部違う数字でポーカーの役を作り直す”というのが、なの菓子のチャレンジだった訳です。

 

念頭にあったのは「究極超人あ〜る」です。お菓子屋を部室に見立てて、個性的な人が入り乱れてはお菓子のを食べて帰って行く。それをグルグルグルグル回していく。みたいなことを考えていました。だから、タイムくんのたたずまいはあーるくんがモデルなんです。そんでもって、群衆コメディのスパイスとしてあだち先生の「ラフ」みたいにライバルの和菓子屋を置く。

 

我ながら、この舞台はすごく魅力的だったと思う。

 

ただ、その魅力を100%出せたかと言うと、自分の力不足を感じました。どうもスカスカしてるというか、サイズの大きな服を着て歩いてるような…。いくら腕を振り回してもお話が追随してくれない。18ページという何とも言えないページ数に終始悩まされました。お菓子を食べるだけには多く、お菓子とストーリーを両方描くには短い。なんとかお菓子とストーリーを畳んで両立させたい。しかし、そのために必要なキャラクターの超能力やリアクションを使わないと縛っている状況。その解決策としては、早速3話目ぐらいに兆候が現れていますが、ストーリーのテンションで押し込んでいたのです。ただ、この方法だとお菓子がどんどん後退していってしまって、お菓子が脇役になってしまいました。むむーん!これが14ページだったらなぁ…。

 

そのままお菓子が主役になることはなく、セージくんがどんどんストーリーの中心になって、彼には過大な負担をかけてしまいました。申し分けないなぁ。

 

この過度な自分縛りは、当時の僕がいかに尊大であったかと言うことでもあったんですが、同時に「神のみを続けるのに必要な力」というものを考えていた部分もあります。神のみを続けていくと桂馬抜きの展開がかなり続くだろう…個々のキャラがバラバラで動いて面白くかけるかどうか…。ですから、神のみの続きを作るのはしばらくない。と思いますね。

 

とはいえ、本当はそういう不具合も全部含めて続けるのが責任というものだと思うのですが、前にも言いましたが、金銭的な問題も立ちはだかりまして終了させてもらうことになりました…。いい設定を作ったと思っていただけに、不完全燃焼感がつきまといます。だから最終回は、しがらみをぶっとばして爽快感だけを優先して描きました。この最終回だけはスカっとしました。

 

まあ、話せなかった重要なお話も沢山あって、どうして菜花と白川が仲違いしたのかとか、言ってないですしね。

 

なかでも、「誰がタイム君を殺したのか?」という話ですけども。そう、タイム君は死んだんじゃなくって、殺されたんですよ。言葉のお父さんにね。

 

それを踏まえて考えると、一連のタイム君の行動や、なぜ、サリンジャー社内での勝負がすんなり決まっていったのかというのが、結構わかりやすくなります。ねぇ。これをちゃんと描いていったら、更に5冊ぐらい単行本が増えるでしょうね。言葉やほの香さんの話も絡んでいくので、タイム-ほの香、言葉のアイデンティティのお話もまとめて棚上げされてしまいました。でも、これをちゃんと描いてしまうと、タイム君は物語の最後に本当に死んでしまうでしょう。でも僕の心情としては、タイムくんに死んでもらうほどの話を僕が描いたか?という疑念があり、タイム君には引き続き生き残ってもらうことにしました。

 

ただ、苦しみながらも、毎回毎回答えを探してもがいた作品です。ものを作る話ということで、自分に対しての言葉も沢山あります。特に最終回に向かう話・セリフは、後でみたら全て自分へのメッセージとして読めるような気がします。

 

 

最後までなの菓子を読んでくださった方々、ご愛読ありがとうございました。

 

 

ただいま次のお話を僕は構想中です。構想…どころか、もうかなりできちゃってます。次はもう一度、自分の力を発揮できる王道スタイルでやるつもりです。

wakakitamiki * なのは洋菓子店のいい仕事 * 23:14 * - * - * pookmark
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