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8/5:頭と身体のズレ

今週サンデー発売日。いよいよ天理編で一番大事なところ。
どうぞよろしく。




ボクの友人の漫画家・・・の卵が悩んでいて、もう大変。

何を描いても面白い気がしない。最近は悩みすぎて、コマ割りもできない・・・と。1年前はあんなにやる気満々だったのに・・・。もう数ヶ月どん底だ。

別の新人漫画家さんからも「最近マンガを描きながらずっと泣いてる」と聞かされた。みんな悩んでる。



これはボクも体験ある(まあ、今も時々)。ボクが予告だけしてる「セカンドデビュー」でいつか書こうと思っていたんだけど、新人は一度は絶対に壁にぶつかってしまう。

プロになるために、いいマンガを描かないといけない・・・という気持ち。それが逆に、壁を作ってしまうんだ。

よく新人は「もっと勉強しないと」とか、「これから色々なマンガを描いてみたいです」と言う。これはもちろん良いことだけど、勉強は、諸刃の剣みたいなところもある。

頭や理論だけが先に超一流になってしまって、自分の描いているものへの不信感に繋がってしまう。

勉強で身に付くのは、「テクニック」だ。テクニックというのは、「誰にでも使える共有財産」。要は、無個性なものだ。絵もそうだけど、デッサンが整ったからといって魅力的になるとは限らない。むしろ、巧くなればなるほど、誰にでも描けるものになってきてしまう。

マンガもそれと同じで、テクニックの比重が大きくなるほど、誰にでもかける部分、本筋と関係ない「段取り」のコマとかが増えてくる。「オッスオラ悟空!」で始めたらいいマンガを、意味深なアバンタイトルを入れたりしてしまう。1コマで済むところを「流れがよくなる」と3コマ使ってしまう。ラストのインパクトを重視しすぎて、前半がどうでもいい伏線で埋められてしまう。確かにその方が体裁は整うんだけど、その分、その人しか描けないという部分が減ってしまう。形式的にはレベルは高くなってるのに、個性がなくなってくる。これがジレンマなんだ。

ボクもこの闇から長い間抜けられなくって、「理論的には完璧だけど、全然面白くない、前から後ろに流れていくだけのお話」を何本も何本も描いた。自分でも面白くないなあ・・・と思っている。でも、一度身に付いた理論はもう捨てられない。しかも、発達しすぎた審美眼のおかげで、自分の考えることが全部面白くない気がする。ハガレンやワンピのレベルを常に求めてしまう。結果、自信がますますなくなってくる。という状態を、私、5、6年は体験しました。


特に、少年誌は「一般性」を求められるメディアだから、ある程度はテクニックが必要だ。だから、少年誌の新人作家は多くの場合、このテクニックによる無個性に苦しむ。かつて読み切りばっかりが載っていた頃のスーパーを読んでみたらわかるが、一番最後に載ってる新コミの受賞作の方が、その前に載ってる読み切りより面白かったりする。しかし、その前に載ってる人たちも、かつての受賞者で、極めて個性的なマンガを描いていた人たちなんだ。しかし、これは退化した訳ではない。ステップの途中なんだ。

いずれ、自分のなかで使える部分を見いだし、それを100%発揮するためにテクニックを使うようになる。

今振り返って思うけど、作家において本当に魅力的な部分というのは、テクニックで作れない「無意識」の領域に存在する。それはもう考えなくても湧き出るように描ける部分だ。これが武器だ。そして、何も考えなくても面白く描ける部分をできるだけ多くブチこむために、テクニックを使う。禅問答みたいだけど、テクニックが必要な部分を少なくするために、テクニックを使う。そのための勉強だったんだ。ボクがゲームが好き、それをそのままマンガを描いたら、単なるゲームあるあるネタで1話で終わってしまう。そこから始めて、要素を配合し、少年誌連載の話に変換する。ここに、その昔ボクを無個性地獄に落としいれた勉強とテクニックが生きてる・・・はずだ。


悩みのドン底の人に安易に頑張れというのは酷だけど・・・。でも、描きつづけないと、頭のイメージと実際描いてるものの差は絶対に埋められない。バットの振り方を幾ら頭で理解しても、素振り無しでプロレベルになるのはムリです。

なんてボクも偉そうなこと言える立場ではなく。ボクは自信喪失で悩んだ期間の長さについて自慢できる。ふっふっふ、何しろ、受賞から連載取るまで12年だ。だから、今でも油断すると、すぐに闇がすぐ後ろに迫っていて・・・またボクを引きずり込もうとしてくる。だから、金縛りにならないように絶えずペンを動かしています。マンガを決めるのはテクニックじゃないと勉強じゃないとわかった今、ますますマンガはよくわからない。締め切りがなかったら、担当さんがいなかったら、ボクはまた闇に呑まれるだろうな。結局・・・描くしかない。


でも、抜け出した人もいる。

今週のサンデー本誌で予告が載っているけど、来週本誌に掲載される佐藤五月くんの「妖怪ジャンクション」。ボクはまだ読んでないけど、これはやってくれるだろう。佐藤君はアルバの時に手伝ってもらったスタッフですが、強力な妖怪知識を持っていながら、強すぎるマンガへのこだわりが壁になるかも・・・実際、めっちゃ寡作やし・・・と不安に思っていたのです。が、ちょっと前にスーパーで載った読み切りが最高の出来だったので、もう大丈夫だ。仮にサンデーで連載できなくても、どこにでも仕事はあるだろう(むしろ少年誌じゃない方が炸裂するかも知れないけど)。漫画家としてのコアの深さはボクより遙か上で羨ましい限りだよ。ボクが担当なら他に逃げられないうちに即連載や。
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